【アルファポリス】競合の増加による業績への影響を低減できる戦略が鍵となるであろう銘柄

企業分析

今回は、最近の株価の値上がり率が大きい株式会社アルファポリスを取り上げてみたいと思います。

アルファポリスは2014年の上場ですが、創業は2000年とIT企業の中では比較的古い会社です。

今回、アルファポリスというサービスを知ったのは初めてだったのですが、非常に面白いビジネスモデルですね。

当時から、同じビジネスモデルを採用していたのであれば、時代を先取りしたサービスであったのではないかと思います。

今回は、その成長性について考察してみたいと思います。

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アルファポリスの事業内容

アルファポリスの事業内容は、「小説・漫画等のコンテンツを書籍化する出版事業」が主たる事業です。

2016年より小説や漫画などの自社IP(知的財産)を活用したゲーム事業も展開していましたが、2018年1月付けで他社へ譲渡しています。

そのため、次期以降は単一セグメントとして再度「出版事業」へ注力ということになるのではないでしょうか。

出版事業の4つのジャンル

アルファポリスの出版事業では以下の4つのジャンルの書籍を取り扱っています。

  • ライトノベル
  • 漫画
  • 文庫
  • その他

ジャンル別の2018年3月期の売上高は以下の通りです。

ライトノベルと漫画が80%近くを占めていることがわかります。

ちなみに「ライトノベル」というのは、一般的な小説よりも軽い文体でわかりやすく書かれた若者向けの娯楽小説を言うそうですが、明確な定義があるわけではないようです。

また、出版物のフォーマットは一般の書籍だけでなく電子書籍でも刊行されており、特に「漫画」ジャンルは電子書籍との親和性が高く、今後もっとも注力したいジャンルであることにも言及されています。

アルファポリスのビジネスモデル

アルファポリスの出版事業のビジネスモデルは、「アルファポリスのWebサイトに投稿された小説・漫画等のコンテンツの中から、サイト内でのユーザー評価を参考として書籍化する」ものです。


出典:www.alphapolis.co.jp

アルファポリスと一般の出版社のビジネスモデルの違いとして以下の点が挙げられています。

① インターネットを通して書籍のコンテンツの調達をおこなっていること

2017年度の有価証券報告書には、コンテンツの調達をインターネット上でおこなっていることに触れられています。

インターネット環境が整備されることで、個人が作成したコンテンツをインターネット上に公開することが容
易となり、インターネット上には多くのコンテンツが現れてきております。当社は、そのインターネット上から
コンテンツを調達することにより安定的に多点数の書籍化が可能となっております。

「インターネット上からのコンテンツの調達」という表現は少し抽象的ではありますが、アルファポリスが運営しているWebサイト上で個人がライトノベルや漫画を公開できるだけではなく、書籍化まで可能なプラットフォームとして展開することで、コンテンツの調達を容易にしているということかと考えられます。

運営するWebサイトの認知度については触れられていませんが、Webサイトへのコンテンツの投稿数が増加していることから認知度も向上していることがうかがえます。

Webサイトの認知度が上がればコンテンツの調達そのものを自社サイト内で完結することも可能になりますので、インターネット上から有望なコンテンツを探すといった手間を省力化できるほか、有望なコンテンツの囲い込みも可能になります。

② ユーザー評価による書籍化すべきコンテンツの選定

アルファポリスではWebサイト上でのユーザー評価を参考に、読者ニーズに沿って書籍化すべきコンテンツの選定をおこなっています。

そのため、書籍化しても売れないというリスクを低減できるという強みがあります。

継続的なコンテンツとユーザー確保への施策

  • 読者にもっとも人気のあるコンテンツ・編集部内で最も評価の高いコンテンツを選出し、賞金の贈呈と書籍化を検討するほか、投票したユーザーに対しても抽選で賞金を贈呈する「Webコンテンツ大賞」の実施
  • 一定以上の人気を博しているコンテンツの作家が編集部へ書籍化の検討依頼ができる「出版申請」制度
  • 投稿作品の人気度に応じ、その作家に対して報酬(Amazon ギフト券など)を支払う「投稿インセンティブ」制度

これらの施策により、コンテンツの収集の取り組みを強化していることにも触れられています。

出版市場は縮小傾向。電子出版は増加傾向

公益社団法人全国出版協会の調査では、出版市場は紙と電子書籍を合わせても縮小傾向となっています。

2017年の紙の出版市場は6.9%減の1兆3,701億円で13年連続のマイナス。

電子出版は16.0%増の2,215億円で増加傾向であることがわかります。

出典:ajpea.or.jp

出版市場の縮小傾向については経営側でも把握しており、決算資料の今後の見通しにも反映されています。

今後の成長戦略

2018年3月期の有価証券報告書は6月9日現在で未提出ですので、2016年度の有価証券報告書に記載のある経営戦略から要約しています。

① 取扱書籍のジャンル拡大

  • 業績拡大とポートフォリオ最適化の観点から、今後は特定のジャンルに依存しないよう取扱書籍のジャンル拡大を図る
  • 特に「漫画」ジャンルにもっとも注力する

② 知名度の向上と作家・ユーザー数の拡大

  • 継続的な新規コンテンツ、及びユーザーの確保が必要不可欠
  • 出版物に対する広告宣伝活動等を積極的に実施。作家・ユーザーの当社Webサイトに対するリクエストにも適宜対応

③ 優秀な人材の確保・育成

  • 読者ニーズの移り変りが激しく、出版するタイミングが極めて重要
  • 編集担当者を増強。ヒットが見込まれる作品はタイミングを逃すことなく確実に刊行していくことが必要
  • Webサイトサービスの速やかな対応を行うためにも、エンジニア人員の増強も必要
  • 即戦力となる中途人材の確保を促進、積極的な新卒採用活動より、将来の飛躍的な成長を担う人材を確保

④ 新たな販路の確保・拡大

  • 書籍コンテンツの販売チャネルを確保・拡大
  • チャネルの収益力の高さを追い求めることが必要
  • アプリでの課金サービス「レンタル」開始(2016年度)。アプリ・Webサイトで書籍コンテンツを販売していく仕組みの強化。投稿から販売までを自社で

⑤ 自社IPを活かした事業拡大

  • 出版事業により蓄積された自社IPを活用した事業の多角展開。メディア展開、グッズ販売、スマートフォン向けの新たなアプリサービス等

事業リスク

有価証券報告書から、業績に大きく影響をおよぼす可能性のあるリスク、出版事業特有のリスクには次のようなリスクがあると考えられます。

① 他社との競合

  • 今後はより一層、類似したビジネスモデルにて多くの新規参入があると考えられる
  • 企業・Webサービスの知名度向上。作家・ユーザーの満足度向上のための施策の継続的な実施による優位性の確保

② 原材料市況

  • 原材料となる紙のコストの急激な高騰による印刷・製本の委託費の増加

③ 出版市場の縮小

  • 書籍の市場規模の縮小
  • 魅力ある書籍の拡充・強化

④ 再販売価格維持制度

  • 再販売価格維持制度の廃止

再販売価格維持制度とは、メーカーが自社の製品を販売する場合に卸業者や小売業者に販売価格を指定できる制度です。
再販売価格維持制度は独占禁止法で禁止されていますが、著作物については認められています。

⑤ 委託販売制度

  • 返品による損失

出版業界では、慣行として書籍の返品が可能な委託販売制度が実施されています。
返品の実績次第では業績に影響をおよぼす可能性があります。

インターネット上のコンテンツをもとにしたビジネスですので、やはりもっとも怖いのは競合が増加することによる相対的な競争力の低下ですね。

特に出版社のような編集力のある企業の参入は脅威です。

また、可能性は限りなく低いとは思いますが、再販売価格維持制度の廃止になれば値引き等でのインパクトもあるでしょうから、大きなリスクと考えられそうです。

株価指標/経営指標

PER(会社予想): (連) 32.57倍
PBR(実績): (連) 5.89倍
ROE(実績): 11.5%%

簡易財務分析

BS(貸借対照表)

出典:GMOクリック証券

自己資本比率が80%近くありますね。

IT企業に多い特徴ですが、現金預金の割合も大きく、これだけを見ても倒産する確率は低いことがわかります。

PL(損益計算書)

出典:GMOクリック証券

2017年に一時的に売上高が低下している理由については、想定以上の返本があったこと、競合の増加による1タイトル当たりの発行部数の減少が理由として挙げられています。

営業利益や純利益の低下については、2016年より開始したゲーム事業の赤字も影響しています。

2018年3月期には、売上高も回復しており、引き続きゲーム事業で赤字ではあるものの、純利益では2016年付近まで戻しています。

2018年1月にはゲーム事業を譲渡済みですので、次期は利益の回復も見込めるのではないでしょうか。

CF(キャシュフロー計算書)

出典:GMOクリック証券

営業キャッシュ・フローはプラスですね。

2015年は株式の発行により財務キャッシュ・フローが大きくプラスになっています。

2016年はゲーム事業関連の無形固定資産の取得が投資キャッシュ・フローの支出です。

所感

この分野ですでに20年近くの歴史のある企業ですので、決算資料からも読み取れますが、出版市場の動向への理解もあり、経営戦略も多面的に考えられているという印象です。

情報開示も細部まで配慮されていて、信頼できる経営陣であることもわかります。

今後の成長性に不安があるとすれば、やはり競合の増加ですね。

2017年の売上高が一時的に低下した要因が、競合の増加による1タイトルあたりの発行部数の減少であることを考えると、成長戦略にあるように「取り扱いジャンルの拡大」や「出版事業以外への進出」が必要であり、かつ新規事業であれば軌道に乗せることができないと安定した成長が難しいのではないかという印象も受けます。

経営陣の信頼性という点では十分に投資対象となる銘柄ではありますが、より差別化できる強みがあると安心であることも確かです。

競合の業種や戦略も気になるところではありますが、それについては別の機会に取り上げたいと思います。

いったんは、短期的な株価の上昇を見込んで保有しても良いのかもしれません。

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