【キャリア】企業の高齢者雇用意識の向上への働きかけと有資格者獲得の優位性構築が鍵となるであろう銘柄

企業分析

今回は、高齢者向けの人材派遣・紹介業をおこなう株式会社キャリアを取り上げます。

一昨日の21日付けで今期の業績予想の修正が公表されている点から、同社の現在の業績と財務状況を確認しています。

また、シニア向け人材派遣・紹介業の市場動向等についても興味がありましたので、あわせて調査してみました。

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キャリアの事業内容

株式会社キャリアの事業内容は、「高齢化社会型人材サービス」の単一セグメントです。

ビルメンテナンス、ベッドメイキング、オフィスワーク、ロジスティックス、介護施設などの様々な分野で、高齢化社会に向けたシニア人材の人材派遣・人材紹介・業務請負をおこなっています。

また、介護施設向けの看護師や介護士を主とした有資格者の人材派遣・人材紹介などの人材サービスもおこなっています。

高齢者社会型人材サービスの2つの事業領域

キャリアが展開する「高齢化社会型人材サービス」には、次の2つの事業領域があります。

① シニアワーク事業

55歳以上の働く意欲のある人を「アクティブシニア」と定義し、アクティブシニアの就労機会の開拓をおこなう。

シニアでも対応可能と考えられる高度なITスキルが不要な業務、体力負担が少ない業務、視力が十分ではなくても可能な業務等を抽出し、シニアを活用することでメリットを得られるような業務フローの改善を提案することで、クライアントにおけるシニアスタッフの活用を推進。

シニアワーク事業の主な区分

区分就労場所業務内容
ビルメンテナンスオフィスビル、マンション、 商業施設等施設清掃、設備管理、通信系軽作業
ベッドメイキングホテル等客室清掃、ベッドメイキング
オフィスワーク官公庁、一般企業、 コールセンター等データ入力作業、書類整理・管理等、コールセンター
ロジスティックス物流業、引越等倉庫内軽作業(ピッキング仕分け、梱包等)、引越梱包・開 梱の作業
有資格者紹介建設業、一般企業等施工管理、経理・監査等

② シニアケア事業

介護施設を中心に看護師や介護士等の有資格者の人材派遣、人材紹介及び紹介予定派遣をおこなう。

保有している資格を活用できていない潜在看護師の復職や、介護施設において必要とされる介護士の人材派遣、人材紹介及び紹介予定派遣を推進。

シニアケア事業の主な就労場所と有資格者

就労場所主な登録有資格者
入所介護型施設看護師、准看護師、介護士
在宅介護型施設
医療機関等

ビジネスモデル

キャリアの事業系統図は下図の通りです。

シニアスタッフや有資格者の登録を受け、人材を企業等に派遣・紹介する一般的な人材派遣業・紹介業のモデルですね。

事業別売上高

事業別の売上高は次の通りです。

事業売上高構成比率
シニアワーク事業(百万円)3,42437.60%
シニアケア事業(百万円)5,66962.30%

シニアケア事業の売上高に占める構成比が大きいことがわかります。

事業別四半期業績推移

事業別の四半期業績推移では、シニアワーク事業・シニアケア事業ともに順調に業績を拡大していることがわかります。

人材派遣業と人材紹介業の違い

人材派遣業と人材紹介業の大きな違いは、雇用契約の締結先の違いにあります。

人材派遣業は、派遣社員の雇用契約を派遣先企業ではなく、派遣会社と結びます


出典:jinzai-business.com

人材紹介業は、紹介先の企業と候補者が直接雇用契約を結ぶ点で、人材派遣業と異なっています。


出典:jinzai-business.com

人材派遣業・人材紹介業の市場規模

参考記事 【2017年版】 人材派遣業界の市場規模と、派遣業界の今後の動向について

こちらの記事を参考にすると、売上ベースでは人材サービス産業全体の市場規模は8兆円と、比較的規模の大きな業界であることがわかります。

個々の市場規模では、人材派遣業が5.4兆円、人材紹介業の市場規模が3000億円と、人材紹介業に比べて人材派遣業の市場規模が極端に大きくなっています。

また、取り扱い求人ベースでは、人材派遣業が83万件、人材紹介業が344万件と、人材紹介業の求人数のほうが多いようです。

高齢者人口の推移

総務省の公表している「統計からみた我が国の高齢者(65 歳以上) 」では、平成52年には高齢者人口は4000万人近くになり、総人口に対する高齢者の割合は35.2%になると見込まれています。

高齢者人口の増加は、シニアワーク登録者の増加につながることも期待できるのではないでしょうか。

高齢者の就業状況(シニアワーク事業)

平成29年度高齢社会白書では、高齢者の就業状態は平成28年時点で60-64歳の男性の7割、女性の5割が就業中であることがわかります。

65-69歳でも男性の5割、女性の3割が就業していています。

全就業者数に占める高齢者就業者の推移では、65~69歳と70歳以上の年齢層の就業者割合が増加傾向であることがうかがえます。

65歳以上の正規・非正規職員数も増加傾向にあります。同時に非正規雇用の割合も増加傾向にあるようです。

性年齢別雇用形態では、60-69歳までの男性の非正規雇用の形態は嘱託・契約社員・アルバイト・パートの割合が比較的大きく、女性ではパートの割合が大きいことがわかります。

「労働者派遣事業所の派遣社員」という就業形態が、男女ともに少数に留まっている点が少し気になる点ではあります。

企業の高齢者雇用の実施状況

高齢者雇用確保措置の実施済企業の割合は99.5%、「希望者全員が65歳以上まで働ける」企業の割合は74.1%となっています。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の「高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」では、「65歳以降も希望者全員が働くことができる」「65歳以降は希望したら基準に該当した者は働くことができる」とする企業が6割ほどとなっています。

「65歳以降は希望したら基準に該当した者は働くことができる」企業の該当基準は次の通りです。

「会社が提示する職務内容に合意できること」「会社が提示する労働条件(賃金の低下を含む)に合意できること」の割合が大きいところを見ると、企業としては高齢者を戦力として積極的に雇用したいということでもないのかなという印象も受けます。

高齢者が就いている仕事(職種)では、「管理的な仕事」「専門的・技術的な仕事」の割合が大きくなっています。

高齢者の就業状況では「労働者派遣事業所の派遣社員」という就業形態が少ないことや、企業の高齢者雇用に対する意識を参考にする限りでは、もう少し開拓が必要な分野ともいえそうです。

要介護者数の推移(シニアケア事業)

高齢者の要介護者数は平成26(2014)年度末で591.8万人となっており、介護職員の需要も高まっていくことも予測されるでしょう。


出典:www8.cao.go.jp

介護職員数の推移

平成24年時点の資料では、介護職員数は要介護者数とともに増加していることもわかります。


出典:www.mhlw.go.jp

介護職員の需給ギャップ

厚生労働省発表の「2025 年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について 」では、介護人材の需要見込みと現状維持シナリオによる介護人材の供給見込みの需給ギャップは、2025年度で37.7 万人と推計され、この需給ギャップを埋める取り込みを国と地方で推進しているようです。

シニアケア事業に登録する有資格者の応募状況や就労条件等はわかりかねますが、要介護者の増加や需給ギャップから判断する限りでは、介護人材の需要は引き続き見込めると考えても良いでしょう。

経営戦略

有価証券報告書から判断できる今後の経営戦略を取り上げています。

① シニア人材の就業機会の拡大

  • 多くの業界や各企業においてはシニア人材の活用を敬遠し、若者を雇用する傾向であることは否めない
  • シニアの就業率の低いクライアントに対し、当初は若年層も含む幅広い年代の人材提供を行うことでクライアントの業務内容の理解を高め、シニア活用コンサルティングにより、シニアでも対応可能と考えられる業務を抽出し、業務分析及び業務フローの改善提案を行っている
  • 業務分析と実際の就業状況をノウハウ・実績として蓄積することで、アクティブシニアの高い就業率を図っている
  • 今後もクライアントに対し、シニア人材の活用ノウハウを啓蒙することなどにより、シニア人材の就業機会を拡大させることや当社のシニア活用コンサルタントの育成強化及び対応業種の拡大が成長のために必要な課題と認識している

② 人材確保と育成

  • 中長期的な成長のためには、優秀な人材の確保と育成が重要
  • 新卒採用を含む積極的な採用活動、教育研修の充実、人事評価制度の構築、魅力ある職場づくりなどが課題

③ スタッフ募集の効率化

  • アクティブシニアの募集については、シニアのITリテラシー(ITを使いこなす能力)の向上に伴い、紙媒体に変わる自社WEBサイトの強化など、メディアによる募集の効率及び認知度の向上が課題
  • 看護師や介護士の求職者の獲得競争が激しい状況にあり、今後も一層の激化が想定される。自社サイトのユーザビリティ向上やコンテンツ強化などを推し進める

④ 新規事業開発

  • 高齢化社会型人材サービスの強化とシニアへの新たなサービス開発が重要

シニアワーク事業については、やはり高齢者を雇用する企業側の意識の啓蒙が鍵となりそうです。

シニアケア事業については、競争の激しい有資格者の獲得に対して、認知度の向上はもちろんですが、ニーズにあった待遇や労働環境の提示が必要になるでしょう。

しかし、業績のためとはいえ、こういった社会の課題とも言える問題に働きかけをおこなうことで取引先に意識変化を促すという取り組みは、非常に有益な事業だと個人としては感じますし、応援したいとも思えます。

事業リスク

有価証券報告書から、業績に重要な影響を与える可能性があると思われる事業リスクを取り上げています。

① 事業の許認可と法的規制

  • 人材派遣事業においては、労働者派遣法その他関連法令に従い厚生労働大臣の許可を受け、人材派遣事業をおこなっている
  • 人材紹介事業においては、職業安定法その他関連法令に従い、厚生労働大臣の許可を受け、人材紹介事業を行っている
  • 何らかの理由により、法令に抵触した場合には、許可の取り消し又は業務の停止等の処分を受け、業績に影響を及ぼす可能性がある
  • 労働者派遣法その他関連法令の改正内容によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性がある
  • 看護師や介護士をはじめとした有資格者を対象とした人材派遣、人材紹介においては、社会福祉士及び介護福祉士法や保健師助産師看護師法等が改定された場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある

② スタッフの確保

  • 競合他社と比較して当社(キャリア)の信用力、ブランド力が低下した場合、優良なシニアスタッフ及び看護師・介護士等のスタッフ確保が困難若しくは非効率となり、当社の業績に影響を及ぼす可能性がある

③ 競争の激化

  • 人材サービス業界は、比較的少額の資本からでも参入が容易なため、多数の競合他社が存在している
  • 設立以来、シニア人材に特化した人材サービスを行っており、競合他社よりも優位となりうる実績とノウハウを有していると考えている
  • しかし、多くの競合他社が当社の事業分野に参入した場合、価格競争激化による収益性の悪化など、当社の業績に影響が出る可能性がある

④ 新規事業進出

  • 事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するために、新規事業への取り組みを進めていく方針
  • 新規事業が安定して収益を生み出すまでには一定の期間を要することが予想され、全体の利益率を低下させる可能性がある
  • 新規事業への投資に対し、十分な回収を行うことができなかった場合当社の業績に影響を及ぼす可能性がある

シニアケア事業においては、有資格者の獲得競争という観点で、やはり競合他社は大きなリスクと考えられるでしょう。

株価指標/経営指標

PER(会社予想): (単) 63.39倍
PBR(実績): (単) 15.06倍
ROE(実績): 33.7%

簡易財務分析

BS(貸借対照表)

流動比率はおよそ180%。流動負債はスタッフ給与や社会保険料等の未払費用が50%近くを占めています。
売掛金・未払費用ともにBSに占める割合が大きいですが、回転期間としてはともに30日ほどですので、特に危険ということでもないでしょう。
有利子負債も小さい比率です。
2016年には公募増資によって資金を調達しています。

PL(損益計算書)

売上高・利益ともに拡大しています。
今年度は冒頭にも触れたように下方修正がありましたので、売上高・利益ともに減少する可能性があります。

CF(キャシュフロー計算書)

営業キャッシュ・フローはプラスで推移しています。

2017年は、自己株式の取得によって財務キャッシュ・フローが大きくマイナスとなっています。

所感

財務状況は特に問題となるような点はないようです。

今期の業績低下が一時的なものであれば、財務状況が悪化するほどの影響はないでしょう。

PERが高いことが気になりますが、自己株式の取得もあり、ROEの高水準は魅力です。

市場の動向も、業績に大きく悪影響を与えると感じる要因はありません。

業績の回復を待って投資を考えても良い銘柄でしょう。

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